3頁:文化の広場:H29以前のBSCGは以下に旧文(リンク一部破損)を、以降の新規BSCG-II記事は11頁に、見出しはこの上へ漸次TIME-LINE様式で


1018/6/3::次の暁クラブの予定が決まりました、9月15日:この3頁のINDEX(6)に情報を縷々お知らせしますので参加してね。

参加希望とお問い合わせはお気軽に後藤まで。9月15日の詳細をp11に載せます


p3:文化の広場"りゅっけん"

2014 秋、暁クラブを10年ぶりに再開しました。INDEX(6)を

 令和元年から:ウクレレ演奏とぴちぇれれくすカルテット&ごつ丸ワクワクBandの活動をp11に。


INDEX

(1) ぎゃらりーBSC: 風よ吹け あなたもご参加ください。

(2) 旅とワインとアートを語ろう: 貴方の情報・質問・知識を是非お知らせください

(3) Infomation for 両高ねんさん会(東京都立両国高校卓球部黄金期クラス会)Page6に移動>>

>>6ページには、ほんの少し両国高校63会マスターズ・メンバーへのお誘い(ほどでもないが)もアップ。

(4) 言葉と音(Jazz & Piano)のスケッチブック すごい感動を綴って見てもいいけど、ちょっとした感動・発見を言葉で切り取って送ってください

「とことんクラリネット」も徐々に充実していきたいなぁ、そして、ハワイアンに限らぬウクレレ企画

(5) 国府台サイクリングクラブは独立ページ(page9)としました。

(6)会って幸せ再生・暁クラブ旅・ワイン・アート・書評など会って話そう、ワイン呑みつつ(ごちそうします) 。

暁クラブとは・ゴットンの隠れ家的・うらぶれ暁サロン(幕張本郷エキチカ)で相互に有益な知的数時間を過ごすのを目的として、以下の心構えで参加する。
1)ゴットンのプレゼンをご披露申し上げるものです。講演リスト(facebookの写真・講演・スライドshowのアルバム)から聴講希望の方にお選びいただきます。2)希望の方は2名から約6名のグループでゴットンに申込みいただきます(メールか直接電話で)。3)日程は金曜の午後・双方の都合のいい日を相互確認。4)ゴットンはワインを用意、参加聴講者は各自おつまみ一品を持参。
5)参加者の代表か少なくとも一名が15から45分の追加のトーク、講演、ミニプレゼンをする。6)プランが決まったら掲示板2などに公表し、数人の個人参加も受け付ける。

 2018/6/3:次のアカツキクラブ予定が決まりました:2018年9月15日、企画1:4時ころから、小生の講演や骨代謝学会の稲毛君の発表や・・企画2;6時ころから、食事しながら、外国旅行や趣味の宣伝など・皆で持ち寄り、企画3:8時ころから、Spineを餌に、盛りだくさんトークで、だらだら(翌朝明け方までも(●`・ω・)ゞ<ok!の)ギリシャワイン飲み会を行います。ここに追加情報を縷々アップします。

 

場所はいつものゴットンの隠れ家(幕張本郷駅近)、個人参加にはゴットンにあらかじめメールか直接電話、あるいはfacebookでの連絡を。メールアドレス:・・・・goto@h7.dion.ne.jp(・・・・の4文字はご存知ですね)。

(7)短編小説銀河鉄道への切符大竹麗子・作風を呼べ


(1) ぎゃらりーBSC:コーナーの{1}:ゴットンの作品集、{2}プロの作品、{3}あなたのも歓迎

{1}ゴットンのコーナー

ギャラリートーク(竹内氏言質参考自己批評)

人物画は最高、しかし何より狂いのないのが前提、これがまず結構難しい(入選作ですら狂いの目立つのが少なくない、此れでも右腕ー手はド^してもうまくいかない)。胸の付近は本質的に間が抜けやすい(ここでもきわどい)。さらりと魅力を出したい。

まだまだこれらは中途だが、さてこれからどうするか。

バンフ晩夏

「バンフ晩夏」は市川市芸術祭:第50回記念美術展に入選となりました。しかし:

ギャラリートーク(竹内氏講評+自己批評)

1)赤と緑の対比基調(補色)は難しい(印象的になりうるが見ていたくなくもなり勝ち、紙一重:リスキー)。

2)絵が一見して全体に重たい、かつ暗い。額(展示での暗茶系)も損してる。

3)ロッジには狂い(遠近法)がある。わかってますが、せっかくのログのいい感じを台無しにしそうだったので。

3)「風景画には何より風が吹き抜けていくような流れが必要」、まあまあ?実は現物はいまいち、バンフの遠景はもっと遠い、その遠さができってない、それは中景の緑の多彩さが足りない(「緑の作色は豊かに豊かに」)為か。近景の緑(木)が近くに浮いてこない為か。「コントラストの獲得には水彩の技法・習作が役立つ」。

4)中景の山の面白さを強調主張したかったが、位置が悪いのか、写真起こしの結果か、感じさせられてないようだ、誰もノーコメント。コレも奥行きもう一歩二歩足りない。結局見る人の足を止めるほどの効果になりきってない。可もなく不可もなく、まとめすぎ?臨場感不足?

5)「同一構造物の三つ以上の連鎖並びはくれぐれも気をつけて」にはまってないか、森の木、もう少し配慮を徹底して風を感じさせたいところ?「動き、躍動感」に通じる、現場で感じてない不利か。もっともっと描きこみが必要。

{2}プロの作品、

その1:1998年 The Posibility: Annie Liao’98 是非原画をお見せしたいなー。

その2:2011年 パリのモンマルトルでゴットン感激の一品(by Mr.H.Takagi)を見つけました。

高木氏の許可を得て(画素数down)ます。ご一緒に堪能してください。


ギャラトーク II(H15.12.21:市川美術会洋画部研究会:信篤会館・よりのMEMO)

1.背景:主題を生かすように、主題とは温暖・寒冷対比を、前、中、遠各パートの緑のコントラストをつけ、木の茎などが背景に飲み込まれないように。

2.風景:最重要課題の奥行き:まずは木などの周り・ふちを白く残す手口は使える。風景でもテーマが欲しい:「--の里山」とか、描きだし、描きながら題名をつけてみる、遠近法はどこも決して狂わない(意図するのは別にして)。三角構図の先端が他を突っつくの普通皆嫌がる。色彩は遠近法のため優先、finalには色は「置くだけ」。滝:水が止まったらもうアカーン。ある建物、噴水、--など美しい構造がいくつもあっては目移りばらばら:順位をつける。灯台と白館:同じホワイトが並ぶのも同じ事:順位をつけてどちらか落とす。

3.絵は創るもの:見た通りの正直一辺倒だと「うそ」になることも:技術上の限界:取捨選択・置き換え・配置ずらし・いいとこ取りの精神:微妙な「うそ」で真実描写が可能になる。

 

 

途中で人の批評を聞くのもいいかもしれない。やはりPC画像と実物は大きな違い、オフ(暁クラブ)までには実物を完成して持ち寄ろうね。

{3} あなたのも歓迎 以下、皆さんのはの対象 (とりあえずここには中途でも可に)

 


(2) 旅とワインとアートを語ろう:写真は珠玉の一枚にしてね。

ゴっとンのギリシャ入門・登竜門は 5 page:global 理念へ

(1)ポルトワイン(オスボーン)をグラスについでしばらくするとゼリー状に固まってくるのがある.いわゆる澱ではない.他のワインでは経験しないが、これっていいの?なぜおきるのか、ご存知の方、教えて.(ゴットン)

(2)ギャラぎゃらトーク:サンタフェのジョージア・オキーフと骨

Dear my コリーグス; みんなで大挙してサンタフェへ行ったのはいつだっけ、もう7年前?そう、CSRSでさ、Kチャンはあの時辛いものを食いすぎて(みんな飲み食いしすぎだぜー、朝な昼な夕なに)病気したり、いろいろ居たねー。あの朝、みんなはスキーへ行ってしまったけど(あの年の暮れのニューメヒコの山は雪無しなのに)、独りでゴットンはサンタフェでオキーフを探していたことは話したよね。所で、オキーフがその人生のターミナルに骨にこだわったのはなぜか?何人かのものとは議論したけど、覚えてる?やっぱり俺は、オキーフは骨をまったく解っていなかった、と再び考えざるを得ないんだ。彼女の作品を最近改めてみてきた(記念美術館ができたので:絵はいいねー、すっばらしいデー)が、骨のダイナミズムを知らない結果としか思えない(矛盾してる)が、改めて、骨アート科学者としてのみんなはどー思う?骨って、究極のカーム?違うでよー、バトルそのものだよなー。(4・5 ゴットン)


(4) 言葉のスケッチブック

(1)昨年84歳のおばあさんが他界した。病院の霊安室で、妹さんが手を合せながら 「あんたー、とうとういいことなーんにもなかったねー、ほしがりもしなかったけどさー、成仏してねー」。 小生 「んー84年なにもなく?この人すごい人だったんだー、偉かったんだなー」と神ー妙ーに思う.(ゴットン)

(2) 川柳などうなってみたい今年の如月14日:「チョコレート きれいに食べちゃう 五十路かな

(3) 哀愁のサイクリスト2003/9 :「草枕 夕べの夢は 都路か 川面の月に 君が景かなし」 

(4)「お父さん、自然とアソボー」:釣り好きの娘・暁子の二十歳頃のことば、最近この言葉を思い出しては癒されることが多くなってきました(H22)。

(5) 「南無そのまんま」:御仏の言葉(ひろさちや)、少なくとも還暦過ぎてだいぶたつと(ごっとん)身にしみるね(その心は5page:もうよそうね、差別化)。

(6)ゴットンのアラフィフの心に沁みたムイシンニン(臨済・無位真人):ゴットン流にムイシンノニン「無位真乃人」と書換えて。 

音(Jazz & Piano)のスケッチブック

*江戸川ジャズふぇすてぃばる2 (H15.summer)終わりました。*今年はちょっとナー!!*

*Next 植村真弓 ピアノリサイタル information: メールください、お知らせします***

*横浜 JAZZ promenade 2003:OCT/11やっと午後だけ聴いてきました。

主会場の一つ:関内ホール(写真左)。友人(JAZZレコード制作会社オーナーのF氏)の誘いで、急遽、車を飛ばして昼ごろ着きました。馬車道通りは開演を待つ人で、おや、うちのかみさんみたいなおば様が熱心にプログラムを見てますねー。あれあれなんでここにサイクリストが?ちなみに決してゴットン(撮影中)ではありません。サイクリストさんは別のコーナーへお願いします。13時台は岸ミツアキトリオ、金井英人ユニット、古野光昭グループなどなど:岸ミツアキトリオを拝聴(藤岡タツヤさんも来てました)。15時台はCLUB Jazzのほうへ、Jazz & Tango, マリア・エヴァ+上野哲郎カルテット、井上淑彦カルテットなどなど:マリア・エヴァ+上野哲郎カルテットをBarBarBarで、立ち聞きで。eveningはギリヤマ・ダンス・トゥループ+板橋文夫オーケストラに興味があったが、時間の関係で、オルケストラカリビアンブリーズを大桟橋ホールで少し聞いて帰ってきました。どれがよかったか?それはもうーみんなー特にーKMかな.話題の松永貴志(12時から)は間に合わなかった。

**クラリネットィスト・人見剛とその仲間たち http://klarinettist.com/

(1)第12回 ねんさん会でのライブ:曲目*・*・*・*

(2)2011・5・1公演:江東公会堂での曲目  1)セレナード10th変ロ長調ブランパルティータK316より 2)17thCenturの古いハンガリーの踊り 3)miniフガート短調 4)楽天家に捧ぐ螺旋 5)newシネマパラダイス 6)絵のない絵本 7)歌劇「セヴィリアの理髪師」序曲 8)Japanese Songs 9)スリーダンス 10)ハンガリー狂詩曲第2番::この私が感動したのはやっぱり7)歌劇「セヴィリアの理髪師」序曲と10)ハンガリー狂詩曲   ゴットンには、ハンガリー狂詩曲第2番と歌劇「セヴィリアの理髪師」序曲がダントツにいいね、音がよかったぁー、そして女房の友人のヴィオラ奏者:ハマさんは Cobaの楽天家に捧ぐ螺旋 がすばらしいとのことでした。


(6)

会って幸せ再生・暁クラブ旅・ワイン・アート・書評など会って話そう、ワイン呑みつつ(ごちそうします) 。

場所はいつものゴットンの隠れ家(幕本)、今後の日時は別記:参加にはゴットンにあらかじめメールか直接電話、あるいはfacebookでの連絡を。メールアドレスは: ・・・・goto@h7.dion.ne.jp 、メール受け次第場所、日時、話題の詳細をメールか電話で連絡します(・・・・の4文字はご存知ですね)。


(7) 特別寄稿・短編小説銀河鉄道への切符:大竹麗子・全4部作。

     人は誰もみな

         現実という列車に乗って

             今という時を走っている。

      だが時折 突然にその列車は

         まったく別の時を走りはじめることがある・・・・・・。

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第一部 :

中尾が山積みになった書類の中からその封書を見つけたのはもう夕暮れ時であった。- - -

 ここ何日か新しいプロジェクトに向けての会議が続いていて、その日も室に戻れたのは昼を大分過ぎてからであった。机の上にはしばらく目を通すことのできなかった書類が山積みになっていた。
 中尾は椅子に腰をかけると肘掛けに両手を置き椅子の背に深く体を預けた。そしてタバコを取り出すと火をつけ、ふかしながらくるりといすを後ろに向けた。ブラインドの隙間から夕暮れの日が顔を照らした。中尾は立ち上がるとブラインドを上げた。見慣れたビルの立ち並ぶ都会の景色が目にとび込んできた。中尾はしばらくその景色を眺めていたのだがそのうち大きくため息をついた。

 中尾恒介四十七歳。大学を卒業して光和商事に勤めて二十四年。これまで健康を害したこともなく順調な道を辿り五年前に営業第一課の課長のポストに就いた。
 子どもは二人いてそれぞれに希望した大学に入り、妻との間にも特別な波風もなく八年前に都心から離れた郊外に家を建てた。つまり文字通り何の不足もない暮らしをしていたのだ。
 しかも光和商事はこの業界では老舗と言われるだけある土台骨のしっかりとした会社で、ここ何年かの不況にもめげず上昇の数字を出し続けている。その中でも営業第一課は商事会社としてのこれからという視点に立ち新しいプロジェクトに挑んでいこうという、まさに活気あふれる部所で、そこの長たるポジションは実に醍醐味のある役所であった。
 だが中尾は近頃こんなふうに太いため息をつきながら書類に背を向け、窓の外の景色をじーと眺めていることが多くなった。そこには都会の巨大なビルが立ち並んでいるだけであったのだが中尾の目はそのビルではなく、ビルの向こうのどこか遠くを眺めているようであった。
 そう、どこか遠くを・・・ ・・・。

 半年ほど前のある日、中尾は朝家を出て会社に向かう途中、何か家に忘れ物をしてきたような気がして立ち止まった。鞄を開けてみたのだがこれと言って思い当たるものもない。定期もサイフもいつものように上衣のポケットに入っている。
"なんだろう、何を忘れたのだろう?"中尾はしばらく歩きながら考えたがとうとう思い出せなかった。
 そしてそれからも何度か同じようなことが続いた。そのうち中尾は忘れ物をしてきたのはどうも自分の家ではない、という気がしてきた。確かにどこかに何かを忘れてきたのだがそれがどこなのか思い出せないまま家でないことは確かだ、とそう思うようになった。
 それなら一体どこなのだろうか?忘れた場所も、忘れた物も思い出せないまま日は経ってゆき喪失感だけは日毎に高まっていった。そして時折何かとんでもない大切なものをなくしてしまったようなたまらない気持ちになり、夜半にも目が覚めることさえあった。

 書類の中から見慣れない封書を見つけたのはそんなときであった。

 「中尾恒介様」

 青いインクの美しい字で宛名が書かれてあったのだが差出人の名はなかった。どこか外国の景色のような見慣れない切手が貼られてあったが消印のスタンプはどこからなのか読み取れなかった。開けてみると中に便箋が一枚入っていて宛名と同じ青いインクの文字で

 「銀河鉄道に乗る季節(とき)が来ました。
            まもなくお迎えにまいります。」
 とそれだけ書かれてあった。
 何だろう?どこかの高級クラブの宣伝だろうか、と思ったのだがそれにしても所番地も電話もかかれていないのだからそうではないだろう。きっと誰かのいたずらだろうと思いかけたとき、目の前の電話が鳴り中尾はそのままその封書のことは忘れてしまった。

 それから何日かしたある晩のことだった。その日は取引先とのつきあいがあり駅に着いたのは11時を少し回っていた。駅から家までは15分ほど歩くのだったが、ここへ引っ越してきたばかりのころはまだ雑木林も多くその道は格好の散歩道であった。だがここ何年かの間に大きなマンションが建ち、それに伴い商店も増え、辺りの景色はあっというまに変わってしまった。

 十分ほど歩いたところに神社があり、その角を曲がるとつき当たりに大きなマンションがあり、そこを右に曲がって少し行った所に家がある。中尾はほろ酔い気分で歩いていった。夜風が頬に気持ちよかった。だが神社の角を曲がったとたん”はっ”として立ち止まった。いつものマンションがないのだ。いやマンションがないだけでなくまわりの様子がいつもとはまるで違っていたのだ。

 目の前には雑木林がありその中を細い道が一本続いていた。”道を間違えたかな?”そう思い戻ろうと振り向いた。ところが振り返ってみると今曲がったばかりの神社もなくいつのまにか中尾は雑木林の中に立っていた。

 するとその時どこからか「ぽー」という汽車の汽笛が聞こえてきた。そして遠くに灯りのついた停車場のようなものが見えた。中尾はその灯りのほうへ歩いていった。

 そこは無人駅であったのだが列車が止まっていて戸が開いていた。中尾はすいよせられるようにその列車に乗った。中には誰もいなかった。中尾は隅のボックスに腰をかけた。するとそのとたんに汽車は走り出したのだ。「ポーーーー」

 汽笛を鳴らし汽車は雑木林の中をゆっくりと走っていった。    ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・ ・・・ ・・・ ・・・。

 窓が開いていて空には満天の星が輝いていた。

「きれいだなぁーこんな星空何年ぶりだろう!」

中尾はしばらくぼーとしたように夜空を眺めていた。するとそのとき、

「切符を見せてください」という声がした。振り向くと古めかしい車掌服を着た男が立っていた。

「切符?」

「そうです銀河鉄道の切符です」 

「銀河鉄道?」

「ええ、この列車はキレーネ海の海の底からアンドロメダ星雲までの銀河鉄道です」

「すみません。何だかボーとしたまま乗ってしまったもので切符持ってないんです」

「持ってるじゃありませんか。ほらその左胸のポケットに」

「え?」

 中尾は驚いて自分の左胸を見た。すると上衣のポケットに何か封書のようなものが見えたので取り出してみると車掌が、

「ええ、それです。ハルニレ山までですね。それではごゆっくり」とそういうと靴音をコツ、コツ、とさせながら行ってしまった。

 中尾は手にしていた封書を見た。すると表に「森川彩様」と書かれてあり、裏を返してみると差出人のところに「中尾恒介」と書かれてあった。

”これは僕の字だ。僕が森川さんに出した手紙だ”

 

「森川彩」 それは恒介にとって忘れられない名であった。高校時代の同期の女子で恒介はこの「森川彩」が好きだった。”でもこれがどうしてここにあるのだろう?そう思いながら恒介は中を開けてみると便箋が二枚入っていた。そしてそこには恒介の字が並んでいた。


  森川さん、今日は思いきって君に手紙を書きました。

 あと半年で僕等はこの学校を卒業してゆきます。卒業してしまうと僕はもう君に会うことができなくなってしまいます。

 そこでお願いなのですが、卒業までの半年間で僕達の持っている時間は四千三百二十時間です。その中の二時間だけでよいので僕に下さい。

 僕は今どうしても君と話がしたいのです。

 君の生まれた秋。十月の土曜の午後、ハルニレ山のてっぺんで夕日が沈むまで待っています。会えるまで毎週そこで待っています。

三年四組中尾恒介


それは三十年前に恒介が確かに書いた手紙だった。だがなぜそれが今ここにあるのだろう?しかもその手紙はポストの前までは運ばれたのだが投函されなかったものなのだ。そう、恒介はその手紙を書いただけで出さなかったのだ。いや出せなかったのだ。そしてその手紙はそのまま燃やしてしまったのに。なぜそれが今ここにあるのだろう?

 するとその時「ポー」と汽笛がなり、しばらくして汽車は止まった。窓の外を見るといつにまにか昼の景色になっていて遠くに山が見えた。「あ!あれはハルニレ山だ!」恒介はそう叫ぶとそのまま外に出た。コスモスが風に揺れる道がまっすぐにハルニレ山まで続いていた。

 

「ハルニレ山」  それは山の頂に一本のハルニレの木が立っていることからそう呼ばれていた。 恒介は麓までくると立ち止まり、しばらくその小高い山を見上げていたがそのうち大きく息を吸い込むと登り始めた。三十分ほどで登りきれる山だった。秋の陽が登ってゆく恒介の背を照らしていた。頂に着くとハルニレの木は昔のままそこに立っていた。

 恒介は高校時代、何度もこの山に登った。たまらなく淋しい時、叫びたくなるほど嬉しかった時、どうしてよいかわからない迷い道に入り込んでしまったとき・・・ ・・・。いつもこの山に登った。そしてハルニレの木の根もとに座り夕日を眺めた。あたり一面を真っ赤に染め上げやがて静かに沈んでゆくその夕日を眺めているうちに不思議に気持ちが静まり、体のどこからか力がわいてくるような気がしたものである。

「なつかしいなあ!」恒介はそうつぶやくとハルニレの木の根もとに腰を下ろした。夕日が辺り一面の畑を真っ赤に照らしていた。しばらくして恒介は昔よくここで唄った「マイオオタム」という唄を口笛で吹きはじめた。

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My own autumn under the tree

  no one knows, I have.

I tell no one about it,

  but only you, I take there.

I'll show you my own autumn.

誰も知らない木の下に

 僕だけの秋がある

誰にもそこは教えない

 けれど君だけはそこに連れてゆきたい

誰も知らない木の下に

 君に見せたい秋がある

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 そしてそれからどのくらいたった頃だろうか。遠くから誰かの声が聞こえたような気がした。恒介は耳を澄ませた。すると風に乗って、

「おそくなってごめんなさい」 という声が聞こえてきたのだ。

「あ!森川さんだ!」恒介は立ち上がった。

 

 中尾の目の前にはいつものマンションがあった。そして右側に家に続く細い道が見えた。中尾はしばらく呆然としてそこに立っていた。

”あれは夢だったのだろうか?”中尾はそれからも何度かあの晩のことを思い出してみた。

 それからしばらくしたある秋の夜、中尾恒介は”森川彩”に手紙を書いた。


 森川さんお元気でしょうか。

 卒業してからもう三十年という月日が経ちましたね。

 僕は今貴女がどんな生き方をなさっているのかまるでわかりません。けれども僕は今とても貴女に逢いたいのです。貴女の持っていらっしゃる時間をほんの少し僕に下さい。

 貴女の生まれた秋、十月の土曜の午後、学校の裏山、ハルニレ山のてっぺんで待ってます。夕日が沈むまであなたを待っています。

 今年お逢いできなければ、来年も再来年も貴女に逢えるまで僕はハルニレ山で待っております。

中尾恒介


その夜、その手紙は”コトリ”と音を立ててポストの中に落ちた。

そしてその時、中尾恒介の胸の中に”コトリ”と音を立てて忘れたものがもどってきた。

 

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     銀河鉄道に乗る切符をお持ちですか

         えっ持っていらっしゃらない

              じゃさしあげましょうか

     いいえお金では買えないのです 浪漫とひきかえですよ

         えっ浪漫てって おききになるのですか

              ほら持っているじゃありませんか

       あなたの左胸のポケットに小さく折リたたんで・・・・。

差出人:おはなしかご